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3月15日

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ゲルハルト・オピッツのベートーヴェン後期ピアノソナタのコンサートに行ってきました。

私はピアノソナタ32番のCD録音を集めて個人的な聴き比べをしておりますが、その中でオピッツの演奏録音に高い評価をしています。

しかしながら、2008年のオペラシティで聴いたオピッツの演奏はずいぶん荒い印象で、CDで聴いたものとのギャップに違和感を持ちました。

そのようなこともあって、今回はオピッツの実演を聴く2度目の機会になりますので、その辺りのことを確かめたい、と思っていました。

 

結論から書きますと、全体のバランス感覚を大切にした聴き易い演奏、かつ質の高さを感じつつも、何か際立ったものをあまり感じられず、

少し物足りない演奏でした。今回、(6年前のコンサートの時のような)フォルテの時に床を踏み込む音が聞こえるような荒さはありませんでした。

 

この12月・1月と2度、フェルツマンのピアノ独特の繊細さと味付けの音色で同曲を聴いた印象が残っている影響もあるかもしれませんが、

やはり32番のアリエッタは演奏技術よりも、この曲への思い入れの強さが必要で、

だんだん慣れてきて曲へのアプローチが淡泊になると、とたんに魅力が薄れるのではないか、と思わずにはいられませんでした。

今回のオピッツの演奏は、多くのピアニストがミスを犯すようなところもサラリと弾いてこなす技術の高さを感じさせながらも、

解釈の面で整理整頓が進んでより聴き易くなった反面、味わい、という面では淡泊な印象が残る演奏だと、私は感じました。

 

※オピッツの名誉のために書きますが、コンサートから帰ってからオピッツのCD演奏を聴き直しましたが、やはり良かったです。

2度の実演を聴いた印象はどちらも今一つでしたが、CDの評価を下げるつもりはありません。

 

前置きがあまりに長くなってしまうので、感想のあとに書くことにしたことがもう一点あります。

それは聴く側(私)の変化の問題です。

ピアノソナタ32番の聴き比べを積み重ねて200以上の録音やコンサートを聴くうち、初めの頃よりも後から聴く演奏のほうが

(比較対象が拡大したため)どうしても評価が厳しくなってしまい、公平性を保つのが難しいと感じることと、

私自身がこの曲を初めて聴いた頃に、純粋に曲の魅力に惚れていた時の感覚が、現在はやや失われつつあると感じており、

曲に惚れていた頃の演奏評価は甘くなりがちで、今の少し冷めた状態で聴いた演奏評価は厳しくなっているのではないか、という

自分の感覚に対する疑念があり、やはり公平性が保てないのではないか、と思ってしまい、多数の演奏の聴き比べの難しさを感じています。

そのため、ここ一年に発売された32番のCDが10数枚、購入して聴いてはいるのですが、、評価は頓挫したままになっております。

※特に近藤嘉宏さんのCDなどはとてもいいので早く紹介したいと思ってはいるのですが・・・。

 

〜〜余談〜〜

今回のコンサートは上野の東京文化会館の小ホールでした。何度もこのホールには聴きに来ています。

ピアノ演奏を聴くにはちょうどいい大きさ(649席)で、かつ比較的どの席でも音の響きが良い印象を持っています。

ところが今回初めてホールのほぼ中央にあたる席だったのですが、前の席に背の高い西洋人が座ったこともあり、演奏者が全く見えませんでした。

扇形に広がる席の配置なのでどの席からも斜めに隙間ができるのですが、真正面だけは席が真っ直ぐ縦に並んでしまうため

前の席の人が大きな人だと前が全く見えないことが判明。せっかくコンサートに来ているのに、まるで自動ピアノの演奏を聴いているかのようでがっかり。

このホールのG〜I列の22〜24番だけは2度と座りたくありません。(J列以降は床が階段状に高くなるのでこの問題は解消します)